1.詰め込み(丸暗記)主義からの脱却

1.詰め込み(丸暗記)主義からの脱却


 丸暗記とは,知識の丸飲みです。「理解」という大事なプロセスを経ずに,単に知識を詰め込んだだけです。噛(か)まずに飲み込んだ食べ物の消化が悪いのと同じように,ただ詰め込んだだけの知識が学習の血となり肉となるとは到底思えません。
 同時に,丸暗記には「忘れてしまったら,すべてがパ~になる」という致命的な欠点があります。公式とか定理がその最たるものです。
 公式や定理は,その成立過程を理解することこそが最も大切であって,それが自分で導けるのであれば,暗記の必要などほとんどありません。

 みなさんは,三角形の面積が,なぜ「底辺×高さ×1/2」なのか説明できますか? 多くの人は,「公式を覚えているかいないかで差がつく」と誤解しています。そうではなくて,「公式が成り立つ過程を理解している人とそうでない人との差こそ,大きい」のです。極端に言えば,公式を暗記して使っているだけの人と公式を覚えていない人とは,「公式の意義がわかっていない」という点で全く変わらないのです。


 知識の詰め込みは,文系科目(英語・国語・社会),特に社会において顕著に見られます。「社会は暗記科目である」と平気で言ってのける人さえいます。社会をニガテにしている人の多くは「覚えきれない」と悲鳴をあげていますが,そもそも「すべてを暗記で乗り切ってやろう」という発想自体に無理があります。あの分厚い3冊の教科書の内容を,すべて覚えきれますか? 太字の用語だけでもあきれるほどの数になります。これらを端から覚えろなんて,イジメですよね。

 教科書をじっくりと読んで下さい。そして,考えればいいのです。この地域でこの産業が盛んになったのには,どのような背景があったのだろう? この戦争はどんなことが原因で,どのような経過をたどり,その結果がどうなったんだろうと。
 地理的な条件も,時代の流れも分からないまま,事柄や人名だけをひたすら暗記する…。これでは,テスト前にどんなに知識を詰め込んでもすぐに忘れてしまうでしょう。社会という科目そのものに対する興味もわかないでしょう。何一つ,いいことはありませんね。
 けれども,いろいろ考えながら学習をすすめてきた人には,1つ1つの事柄が印象に残ります。頭の中で線としてつながってきます。覚えただけのことは忘れても,理解したことは決して忘れないのです。

2へ続きます。


© Rakuten Group, Inc.